(自然も人も同じ一瞬は、ない。自作もできない。「そこで何があったのか?」シーンをカットしよう)
さて、
これから実習に向かう薬学生のために、実習を経験した私たちがつくる
『こうすれば、患者さんの症例へ接したときのアプローチの仕方』提案集をつくる!
という、チームゴールで、テーマを出しあった翌日のこと。
1人の学生から、「テーマを変更したいんです」という相談がありました。
「水疱性類天疱瘡の症例は、治療方法を検討することが、とてもたいへんでした。そして、やりがいがありました。薬局には、この治療のテキストがなく、ガイドラインも調べましたが、ありませんでした。PubMedを調べても、いい文献がなく、Googleを調べたら、いくつかヒットしました。ちょうど大学の先生から、文献検索を習ったところで、その文献からキーワードを拾って、治療方法を確認しました。そのことをテーマにしたいです。」
という主旨でした。
学生のノートには、「アカデミック的」というメモ書きがあります。
うん。
気持ちは、とてもわかる。
それに、がんばって検索したことを、私も認めている。
そして、私は、こう話しました。
「とても興味深いですね。
水疱性類天疱瘡の治療は、薬も適応外ですし、文献を探すのも大変だったでしょう。
そこまでチャレンジしたことは、まず、すごいな、と感心しています。
でも、文献検索は、大学や図書室、インターネットがあれば、
できたことかも知れませんね。
どうでしょう?
患者さんやスタッフとの関わりのなかで学べること。
この病院にいないとできないことは、何だろう?
水疱性類天疱瘡の皮疹の記録がカルテに書いていなくて、とても困った。
この場面は、とても興味深いと思うのだけれど」
それでも、学生は、困った様子です。
つづけて、私はこう質問を続けました。
「では、もう1度その場面について、私に話しかけてくれますか?
<私の問いかけ> | <学生の言葉> |
カルテは、どのくらいの期間見ていたの? | 2週間 |
2週間!ずっとカルテを見ていて、皮疹の記載が見つからなかった? | そうです |
どんな気持ちでした? | いやー、困ったなーと。いろいろな単語も調べました |
それで? | いよいよ症例発表の〆切が近くなって、担当薬剤師さんに相談したら「看護師さんに聞いたらいいんじゃない?」と |
ほう、どうして薬剤師は看護師に聞いたら?といったのだろう? | ん・・・。 |
それで? | それで、病棟にいってみました。 |
何かを持っていた?手ぶら? | いえ、患者さんのカルテを持っていきました |
それはどうして? | 患者さんのことを聞くから。 |
患者さんの何を? | 皮疹について。カルテに書いてあるかも知れないし |
それで、看護師さんは誰を選んだの? | 誰というと? |
看護師長さん?、主任さん?、部屋担当の看護師さん?、それとも暇そうな看護師さん? | ・・・んー、ちょっと覚えていないです |
それもあとで確認しましょう。で、何時頃に聞いたの? | 夕方過ぎかな? |
看護師さんが対応しやすい時間? | あっ。そうか、そういうのも。 |
看護師さんにどうやって近寄ったの? | えー、そういうのも? |
そうですよ。どんな気持ちで? | 緊張しました。でも、ちゃんと自己紹介して・・・。 |
看護師さんはどうでした? | それが、最初から患者さんを受け持っていた看護師さんで、皮疹のことを最初から最後まで全部話をしてくれました |
全部?。それで? | 頼んでいないのに、病室まで連れていってくれて、患者さんにお願いをして、もう一度皮疹を見させてくれた |
どうだった | 身体の右半分がこうで、左半分がこうで・・・。 |
それ、手書きで図に書いた? | あっ・・・。 |
(つづく・・・)
場面を想起できるように、1秒も逃さないよう、シーンをカットして尋ねました。
学生の顔色が、少し明るくなります。
気づき)
・私は学生に、何をしようとしたのか。
・何に気をつけて、問いかけていたのか。
・週末に考えて、つづきは次週に。
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