相手に言葉を差し出すときの「慎重さ」を

スマホもなければ、LINEもない。 

そんな時代の連絡手段といえば、各家庭にある「固定電話」しかありませんでした。

家にあるたったひとつの電話に、思い切ってダイヤルを回す。急ぎの要件も、「これから遊べる?」という何気ない連絡も、すべてはその電話一本にかかっていました。

受話器の向こうにお目当ての友人が出てくれればラッキーですが、時には友人のお母さんがでることも。「あっ、あの……」と一瞬で心臓が跳ね上がります。

誰かにメッセージを届けるということは、いつの時代もそれくらい慎重で、緊張するものだったのかもしれません。

いまや、片手ひとつで瞬時に世界中へメッセージが送れてしまう。

けれど、手軽になったからこそ、かえって慎重になる自分も。 一度送ってしまえば取り消すことはできませんし、何より「送った瞬間」「届いた瞬間」がそのままログとして残るからこそ、言葉選びには余計に気を遣う。

ツールの形が変わっても、相手に言葉を差し出すときの「慎重さ」だけは、今も昔も変わらず大切に。

私は世界の一部だから、つまり「世界を知っていく」ことだ。

ほんとうのことを書く練習 「わたしの言葉」で他者とつながる文章術、土門蘭、2026

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