この部屋の小さな窓から見えるのは、東急電鉄の品川駅のホームだ。赤い車両が、早朝も深夜もせわしなく人々を運んでいく。
電車に乗ることは、通勤であったり、旅行であったり目的があるのがふつう。それは、移動のための手段だから。
でも、しばらく部屋にこもっていると、目的はなくても、乗り物に乗りたくなる。そこを走っているタクシーでも、バスでもなく、いまは電車に乗りたい。
きっと、見知らぬ、いや知っている風景でもいいのだが、さーっと定刻通りに動き出して、気になる駅で降車して、駅の構内で、蕎麦でも寿司でも食べて、ビールを飲んで、本屋に寄って、帰宅したい。
それだけで、十分に贅沢な気分になる、
ことを想像してしまう。
いまや、私にとって、目の前の東急電鉄に乗ることは、初めて飛行機に乗るような憧れでしかない。
あるもので、あることしかできない制約は、生活時間がスローになり、やがてコマ送りになり、見逃していたものを見せてくれる。
そうだった。
こういうときは、とりあえず「よし!」と言うんだった。
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