EBMをしばらく勉強すると、COOKBOOK医療ではないことがすぐにわかります。文献検索も、慣れれば難しくありませんし、論文の吟味も訓練をすれば身につくはずです。しかし、患者個々の事情を一般化するファーストステップの「問題の形式化」は、簡単ではなく、患者への適応とならんで多様性がある、いちばんオモシロイことに、気がつきます。
EBMの3サークル(evidence, experience, and values)のうち、valuesは「患者さんの好み(自分がどう生きたいか)」といってもいいかも知れません。
あなたは病院で薬事委員会の事務局をしている薬剤師です。あなたの病院は、脳外科では著名な P 病院と脳卒中の地域連携パスを結んでいるため、 P 病院で脳卒中・脳梗塞の初期治療を終えた患者さんがリハビリのために転院してきます。
最近、持参薬を調べているとエパデール R を持参している患者さんが多く見られます。しかし当院では採用薬ではないため、他の高脂血症用剤かプロサイリンなどの循環改善薬を代替として提案しています。元々あなたは「エパデール R なんて魚の油に過ぎないだろう」と、興味もありませんでした。でもエパデール R を持参される患者さんが増えるようになって、あの P 病院の脳外科が採用しているのなら、なんらかのエビデンスがあるのかな?と思うようになりました。
ある朝のミーティングの患者紹介で、担当薬剤師より「入院 30 日目で A さんの持参薬がなくなるが、コレステロールも高くないため Dr と相談の結果エパデール R を中止することになった」しかし、「エパデールを中止にする旨を A さんに説明したところ『魚の油だけは飲みたい。 P 病院でもこれをしっかり飲むように言われた。中止してまた脳梗塞になったら責任を取ってくれるのか?』と言われてしまった」、との報告・相談を受けました。
<患 者> Aさん 62歳 男性 タクシー運転手 1人暮らし
<嗜 好> タバコ: 60本/日 46年 酒:機会飲酒
<既往歴> 右放線冠部血栓性脳梗塞、糖尿病、脂質異常症
さあ、あなたならどうしますか?
このシナリオから、患者さんについて問題を形式化するとどうなるでしょう?
Patient | 糖尿病で脳卒中の既往歴のある62歳の男性に |
Exposure | コレステロールの従来治療にエパデールを追加すると |
Comparison | コレステロールの従来治療単独と比較して |
Outcome | 脳卒中の再発を予防する |
となるでしょうか?
さらに、Patientの部分は、以下のように階層化されます。
最大リスク | 脳卒中の再発 |
(なぜなら)背景疾患 | 糖尿病+脳卒中既往 |
(なぜなら)生活背景 | タクシー運転手(不規則勤務、長時間座位) |
この患者背景で、イコサペント酸エチル(EPA)は、どのくらいの効果をもたらすのでしょか?
患者さんへの適応は、ディスカッションが必要なようですね。
問題は一般化しないと解決しない。
なぜなら、一般化された問題しか共有できないです。
気づき)
・EBM箱根合宿より、一番感心したことのメモです
これから)朝から看護学校の薬理(あと残り3回)
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