ワタナベくんの孤独には、ひどく共感してしまう【ノルウェイの森】村上春樹全作品 1979~1989〈6〉

marunouchi

 ベストセラーだからという理由ではなく、全集を読んでみるという試みで「ノルウェイの森」に突入です。やっぱり、良い作品なんだと確信しました。

 女とセックスとアルコールは、村上春樹作品の一貫したテーマのような気がしています。そして、この作品では「孤独」がテーマになっています。孤独とは、人として、本質的だと思います。

ノルウェイの森が評判になったころには、私の友人は、「でも、死んじゃうのはだめだ」と言っていた。フィクションなのだから、ストーリーの都合で殺されてしまったり、自殺してしまったり、死んでしまうことは、仕方のないイベントと思っていましたから、友人のいう「死んじゃだめだ」は、どういう意味なのか、わかりませんでした。

 ノルウェイの森では、総勢、数名の登場人物が、亡くなったり、行方不明になったりします。45歳をすぎた私がこの作品に共感するのは、そういうことは、思っていた以上にありうるという実感です。
 主人公のワタナベくんの孤独には、ひどく共感してしまうのです。

もとねすメモ)高校生のころには、さっぱりわからなかった作品でしたけど。大丈夫。孤独があるから。

 前と同じスチュワーデスがやってきて、僕の隣りに腰を下ろし、もう大丈夫かと訊ねた。
 「大丈夫です、ありがとう。 ちょっと哀しくなっただけだから(It’s all right now, thank you. I only felt lonely, you know.)」と僕は言って微笑んだ。
 「Well,I feel same way,same thing,once in a while. I know what you mean.(そういうこと私にもときどきありますよ。 よくわかります)」
 彼女はそう言って首を振り、席から立ち上がってとても素敵な笑顔を僕に向けてくれた。

(『【ノルウェイの森】村上春樹全作品 1979~1989〈6〉』)

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