その電車は、模型のように揺れながら、かまくら駅から東京駅へと向かう。座り心地が心配になる椅子も、電車の揺れも、気になってしまいます。それでも、銀座まで運んでくれるのは、ありがたい。銀座4丁目の和光の時計は、変わらずに堂々と威風を放ち、木村屋さんも垣間見える。
戦後を区切りに政治も文化も変わり、いまに引き継がれていることを想像するときに、1945年前後を知りたくなります。風景や町並みをそのままに映しだしてくれる映画からは、生活も空気感も察せられます。
この時代を代表する小津安二郎監督は、よけいな演技をさせずに、そのままの人を見せてくれるような気がして。私も役者と同じ家族になったようで、はらはらさせられてしまう。この面白さは、山田洋次監督も同じ。
デジタルで作られた映画は「あ、2016年って、あんなだったね」とはならないのでしょうね。いや、2016年ってこんなだったね、ってなるのかな。
もとねすメモ)戦後4年目で、よくこんな映画が撮れたものです。
行ってみんのよ。嫌だったら出てくんのよ。平気よ、平気。で、にっこり笑ってやんのよ。そしたら旦那様惚れてくるから、そしたらちょこっとお尻にしいてやんのよ。
(小津安二郎『晩春』)
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