ちょうど「うつ病」の講義が終わり、JAMAを読む。ストレスフルライフイベント、セロトニントランスポーター、遺伝か・・・。知らないことだな、きっと。
ヒトのセロトニントランスポーターの遺伝子には,プロモーター領域が長い(L 型)および短い(S 型)2 種類の遺伝子がある(J Neurochem 1996; 66(6): 2621-4.)。そして、S 型保有者はL 型保有者と比べ,うつ病を発症しやすい(Science 2003; 301(5631): 386-9.)。また、日本人はS 型の遺伝子をもつ割合が高く,S:L = 79:21,s/s:l/s:l/l:= 64:31:5 と報告されている(Mol Psychiatry 1997; 2(6): 457-62.)。
遺伝要因と環境因子の相互作用で、うつ病のリスクが上昇する仮説もある。
(遺伝要因)セロトニン・トランスポーター遺伝子Serotonin Transporter Gene
(環境因子)ストレスフル・ライフ・イベントStressful life event
しかし最近のJAMAの報告では、その相関性は再現されなかった。遺伝環境だけでも、それに環境因子を加えてもうつ病のリスクは増加しない。
Interaction Between the Serotonin Transporter Gene (5-HTTLPR), Stressful Life Events, and Risk of Depression;A Meta-analysis
JAMA. 2009;301(23):2462-2471.
[はじめに]根拠のある報告として、polymorphic region (5-HTTLPR)に関連するセロトニントランスポーターと、大うつ病のリスクを増大させるストレスライフイベントとの関連の報告を支持する環境因子について、complex mentalやbehavioral disordersの遺伝候補として確定に貢献しつつある。
[目的]出版されている情報と個人レベルのオリジナルデータで、セロトニントランスポーター遺伝子とストレスフルライフイベントにおけるうつ病との関連をメタ分析した。
[データ]PubMed, EMBASE, and PsycINFO databases through March 2009を検索し、26の論文がみつかり、14論文がメタ分析の基準を満たした。
[基準]メタ分析のための論文の基準として、5-HTTLPR genotype (SS, SL, or LL), ストレスフルライフイベントの数 (0, 1, 2, 3)、または同等のものと、うつ病のカテゴリーとして、the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (Fourth Edition) やICD-10もしくは、standardized rating scalesによるうつ病の定義についてカットポイントをつかった。最大限の評価をするために、変数の定義を共通のフレームで行い、基準にあてはまる2008年以前に出版されたすべての研究からオリジナルなデータについても要求をした。14究がメタ分析され、10研究はオリジナルな個々のデータから、準性別メタ分析も行った。ロジスティック解析で、5-HTTLPRの短い対立遺伝子short alleles???の数、ストレスフルライフイベントの数、そしてそれらのうつ病への相互作用の効果を見積もった。オッズ比と95%信頼区間をそれぞれの研究で別々に算出し、random-effects meta-analysisを使って、ここの見積もりの平均を重みをづけた。性別をあわせた場合と、性別を分けた場合のメタ分析も考慮した。14、250名の患者で、1,769名がうつ病と診断された;12,481名にうつ病はなかった。
[結果]出版されたデータのメタ分析で、ストレスフルライフイベントの数は、有意にうつ病と関連した(OR, 1.41; 95% CI,1.25-1.57)。5-HTTLPR genotype とうつ病には、ここの研究においても、weighted averageにおいても関連性はなかった (OR, 1.05; 95% CI, 0.98-1.13)し、遺伝子のタイプとうつ病のストレスフルライフイベントも関連性はなかった(OR, 1.01; 95% CI, 0.94-1.10)。比較できる結果が、個々のデータから性別のメタ分析で見いだされた。
[結論]このメタ分析からは、セロトニントランスポーターの遺伝子タイプ単独、もしくはストレスフルライフイベントとの相互作用が、男性のみ、女性のみ、または両方をあわせたうつ病のリスクを増加させることと関連があるというエビデンスは導けなかった。
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