学生時代にフロムの「愛するということ」を読んだときの衝撃は忘れられません。新宿の紀伊國屋書店のエスカレーターを上がったあたりに、ひっそりと、でも堂々とその表紙を手にして立ち読みをして、これだ、と直感したのです。
とくに、はじまりの部分は、何度も読み直して、コピーをして友人たちと語り合ったものです。
当時は、東京ラブストーリーを楽しみにしながら、ハウツーで恋愛をしていたようなものでしたから、「愛するということ」から発せられる1つ1つのメッセージは、正統な助言として別格だったのです。
とはいえ、簡単に理解ができる内容ではなく、大事がことが書いてあるはずだけれど、どうすればよいのかまでは、落とし込めませんでした。
そして、何年も経ってから、当時の訳者の鈴木さんが、解説本といってよいのか、解釈を手助けしてくれる本書が出版されたのです。
「愛するということ」と合わせて、深堀りしましょう。
「人間は孤独を最も恐れている」というのが、すべての前提となります。孤独を嫌いながらも、一方で人間は自由への憧れをもっています。そのため、必然的に人びとは自由を求める方向に進んでいくのですが、やっかいなことに自由になればなるほど、個人個人がバラバラに生きることになり、やがては孤独に苦しむようになります。そうなると、今度は孤独から逃れるために、人間は自由を手放すことを自ら選択し、大きな権威に身をゆだねる方向に向かっていく。つまり、自由と引き換えに孤独から逃れようという心理から生まれたのがファシズムである、というのがフロムの考えた論理です。
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