「幽霊はいると思いますか?」という質問を何度か受けたことがある。
まず、この「いると思いますか?」という質問が変なのだ。
僕がどう思っているのか、ということは、ものの存在とは無関係なのである。
(『科学的とはどういう意味か』森博嗣)
療養型病棟の担当薬剤師が、院長より「高齢者の抗コリン薬どうしようか?」とお声をかけていただいたようです。
質問
抗コリン薬を服用している高齢者は、認知障害のリスクが増加するか?
P | 高齢者に |
E | 抗コリン薬の投与をすると |
C | 投与をしない場合と比べて |
O | 認知障害が増加するか? |
論文検索
*今回は、院長より紹介いただいた論文
論文
Non-degenerative mild cognitive impairment in elderly people and use of anticholinergic drugs: longitudinal cohort study.
BMJ. 2006 Feb 25;332(7539):455-9. Epub 2006 Feb 1.
*全文が読めます。
Non-degenerative mild cognitive impairment in elderly people and use of anticholinergic drugs: longitudinal cohort study
Objective To assess the potential of anticholinergic drugs as a cause of non-degenerative mild cognitive impairment in e...
JAMAのユーザーズガイドで、ざっと吟味。
<結果は妥当か?第1の基準>
研究デザイン | 症例対照研究(Longitudinal cohort study.) |
明確に特定できる比較群があるか? | YES(ただし、ベースライン評価なし) |
アウトカムに影響する重要な因子を検討しているか? | YES |
暴露とアウトカムは同じ方法で測定されているか? | YES |
経過観察は十分に長く、完全か? | 1年間 |
<結果は妥当か?第2の基準>
暴露と害の時間的関係は正しいか? | YES |
量-反応関係があるか? | 不明 |
<結果は何か?>
暴露とアウトカムの関連性はどれだけ強いか? | オッズ比5.12で、かなり高い |
リスクの値の精度はどの程度か? | 不明(信頼区間なし) |
<臨床に意味があるか?>
結果を臨床に適応できるか? | YES |
リスクはどの程度大きいか? | 軽度の認知障害だが、頻度高く、リスク程度は大きい |
暴露を防止するよう努力すべきか? | 努力すべき |
<担当薬剤師と検討すること>
60歳以上の高齢者への抗コリン薬は、処方中止を検討しませんか?
・1年後の軽度認知障害は5.1倍、投与患者の80%にリスクがあり、うつ病リスクはない。
・当院の療養型病棟では、抗コリン薬は何%くらい処方されていますか?
・検討対象は、とくに精神科、泌尿器科でしょうか?
担当薬剤師と院長との検討に期待。
気づき)
・久しぶりに論文書き込み
・BMJは、フリーなので助かります
・こういう大切なテーマで、今後も勉強したい
- 作者: 森博嗣
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