薬害イレッサ訴訟に学ぶ「添付文書の責任」

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 薬害イレッサ訴訟では、先月の大阪地裁判決では、添付文書の記載を巡る行政指導は「万全とは言い難いが違法とは言えない」として、国への請求を退けました。一方、昨日の東京地裁では、「承認時、安全確保のための指導が不十分だった」と国の責任を認めた判決を下しました。

 イレッサの輸入承認時における権限不行使の違法について。

1.「製造業者又は輸入業者」が作成する添付文書

 医療用医薬品の添付文書とは、薬事法第52条1号の規定に基づき医薬品の提供を受ける患者の安全を確保し適正使用を図るために、医師、歯科医師及び薬剤師に対して必要な情報を提供する目的で当該医薬品の製造業者又は輸入業者が作成するものである(添付文書通達)

 上述のように、現在の薬事法の解釈では、添付文書は、製造業者又は輸入業者が作成する、とされています。また、厚生労働大臣や厚生労働省令についての法的な責任の記載がありません。

2.よって大阪地裁では、国には添付文書を行政指導する法的拘束力がないという判決

 先月の大阪地裁判決では、以下のように解釈できます。

(ま ず)「(アストラゼネカ社に)警告させる法的権限はなかった」

(よって)「行政指導で警告欄に書かせようとしても法的拘束力がなく、ア社が応じなかっただろう」

(だから)「万全とは言い難いが違法とは言えない」(→国への請求を退けた理由)

 国に添付文書を行政指導する法的拘束力がないなら、誰が、この国の医薬品の安全性を監視するのでしょうか?、という疑問。。。

3.危険性を認識していたのだから、指導責務があると判断した東京地裁

 昨日の東京地裁判決は、以下のように解釈できます。

(ま ず)「国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識していた」

(だから)「安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある」

 判決骨子には、「イレッサの添付文書の第1版の記載は、イレッサを使用する医師等にイレッサによる薬剤性間質性肺炎の危険性を認識させるのに不十分であったのに、厚生労働大臣は、必要な行政指導をしなかったから、その権限不行使は、国家賠償法の適応上違法である」とされています。

 両地裁とも同じ判断に至れなかった背景には、添付文書についての薬事法上の位置付けが明確でないことにあるようです。肝炎訴訟からも、見直しが行われている薬事法が、どうあればいいのか?考える必要がありそうです。

これから)薬学部5年生の長期実習が、震災の影響で中断されました。11週間のうち、9週間の途中中断です。ご本人をはじめ、大学の先生方も残念な気持ちと察します。私たち薬剤師、そして病院のスタッフも、残り2週間でいかに臨床を学ぶか、期待をしていたところです。この薬害問題についてのディスカッションも途中でしたね。学生のみなさんには、まだ未来の時間がたくさん残されていますので、大きく飛躍されることを願って、明日の最終日を迎えたいと思います。

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