化学療法による遅延性悪心・嘔吐に、パロノセトロンの予防効果

 長い間、化学療法による悪心嘔吐の予防には、5-HT3阻害剤のグラニセトロンを使用してきたが、遅発性の悪心嘔吐には、パロノセトロンが効果があるらしい。

 ・1日1回投与の適応のみ

 ・薬価、および購入価はグラニセトロン後発品と比較してどうか?

 ・遅発性悪心嘔吐の患者様がどのくらいいるのか?

*資金提供に、Taiho Pharmaceutical (Tokyo, Japan)と記載されている点は気になりますが、全文は大鵬薬品工業に依頼すればいただけます。

Palonosetron plus dexamethasone versus granisetron plus dexamethasone for prevention of nausea and vomiting during chemotherapy: a double-blind, double-dummy, randomised, comparative phase III trial

Lancet Oncol. 2009 Feb;10(2):115-24. Epub 2009 Jan 8.

化学療法中の悪心嘔吐の予防でパロノセトロンとグラニセトロンの比較

背景:パロノセトロンPalonosetronは、第二世代の5-hydroxytryptamine 3 (5-HT3)阻害剤で、化学療法による悪心嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting ;CINV)で、 中程度の催吐性のある化学療法の治療を受けている患者において、オンダンセトロンondansetron やドラセトロンdolasetronよりも効果が示されており、 高度催吐性のある化学療法を受けている患者のCINV予防には、オンダンセトロンと同等の効果が示されている。このフェーズIII試験は、multicentre, randomised, double-blind, double-dummy, stratified, parallel-group, active-comparator trialで、高度催吐性のある化学療法で 悪心嘔吐を引き起こす化学療法で、デキサメタゾンの投与を受けているパラノセトロンとグラニセトロンの有効性と安全性を評価した。

方法:2006年7月5日から、2007年5月31日までに、1,143名の高度催吐性のある化学療法を受けているがん患者(シスプラチン、またはアントラサイクリンをそれぞれにシクロフォスファミドで組み合わせた治療 cisplatin, or an anthracycline and cyclophosphamide combination [AC/EC]を日本の75の施設で登録をし、化学療法1日目の投与30分前に、パロノセトロンpalonosetron (0・75 mg), もしくはグラニセトロン granisetron (40 μg/kg) とそれぞれにデキサメタゾン (16 mg intravenously) を投与し、2日目、3日目には、追加投与 (8 mg intravenously for patients receiving cisplatin or 4 mg orally for patients receiving AC/EC) を行った。第一のアウトカムは、急性期(0-24 h postchemotherapy; non-inferiority comparison with granisetron)における完全緩解 complete response (defined as no emetic episodes and no rescue medication) と、投与後のフェーズthe delayed phaseにおける完全緩解 (24-120 h postchemotherapy; superiority comparison with granisetron)。このプロトコルによる非劣性の範囲は、完全寛解が各群の差として10%と事前に仮定した。パロノセトロンの投与量0.75mgは、日本人における2つの投与量の評価試験で選択された。今回の治療と高度催吐性のある化学療法を受けたすべての患者が、効果分析(ITT解析)に含まれた。この試験は、This trial is registered with ClinicalTrials.gov, number NCT00359567.に登録された。

結果:1,114名の患者について効果分析をした(555名の患者がパロノセトロン群で、559名がグラニセトロン群)。パロノセトロン群555名のうち418名(75・3%) が急性期に完全寛解し、グラニセトロン群は559名のうち410名(73・3%)であった (mean difference 2・9% [95% CI 2・70 to 7・27])。投与後のフェーズでは、パロノセトロン群555名のうち315名(56・8%) が急性期に完全寛解し、グラニセトロン群は559名のうち249名(44・5%) であった(p<0・0001)。主たる治療による副作用は、便秘( (97 of 557 patients [17・4%] in the palonosetron group vs 88 of 562 [15・7%] in the granisetron group) 、血清アミノトランスフェラーゼ (aspartate aminotransferase: 24 of 557 [4・3%] vs 34 of 562 [6・0%]; alanine aminotransferase: 16 of 557 [2・9%] vs 33 of 562 [5・9%])の上昇であった。グレード4の報告はなかった。

解釈:高度催吐性のある化学療法の前にデキサメタゾンを投与する時には、パロノセトロンは化学療法による悪心嘔吐に対する効果について、急性期においてはグラニセトロンに劣らない効果があり、投与後のフェーズ(1~5日目)においては、グラニセトロンよりも効果があり、副作用も同等である。

資金提供:大鵬薬品株式会社

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