朝の医局勉強会で指導医が紹介していた論文のつづき。
Contrast-induced nephropathy is defined as either a greater than 25% increase of serum creatinine or an absolute increase in serum creatinine of 0.5 mg/dL
→造影剤腎症は、血清クレアチニンチが25%以上増加、または、血清クレアチニン値が0.5 mg/dL以上になる。
造影剤腎症の予防のための炭酸水素ナトリウム療法の効果は不明、という報告。
系統的レビュー:造影剤腎症の予防のための炭酸水素ナトリウム療法
Systematic Review: Sodium Bicarbonate Treatment Regimens for the Prevention of Contrast-Induced Nephropathy
Ann Intern Med. 2009 Nov 3;151(9):631-8.
背景:炭酸水素ナトリウムの静脈注射は造影剤腎症(CIN;Contrast-Induced Nephropathy)のリスクを減少すると考えられている。
目的:CINのリスクに対する炭酸水素ナトリウムの効果を判定する。
情報源:1950年から2008年までのMEDLINE,PubMed,EMBASE,Cochrane Central Register of Controlled Trials(訳注:英国の Cochrane Collaborationが医療情報を収集,提供しており,Cochrane Central Register of Controlled Trialsは,適切にデザインされた臨床試験についての文献を集積したもの),学会の抄録とClinicalTrials.govを参照し,言語の制限はしなかった。
研究の選択:造影剤使用後,血清クレアチニン値が前値の25%増加,あるいは44μmol/L(0.5mg/dL)増加をCINのアウトカムと事前に明記された炭酸水素ナトリウムの静脈注射の無作為化比較試験。
データ抽出:標準化されたプロトコルを用いて,2人のレビュアーがそれぞれの研究からデータを連続的に抽出した。
データ合成:3,563名の患者と396のCIN発症の情報のある,23の発表されたあるいは発表されていない試験が含まれた。総合した相対リスクは0.62(95%CI,0.45~0.86)で研究全般において明らかに不均一な結果であった(I2=49.1%,P=0.004)。一部の不均一性は発表された研究と発表されていないものでの結果の違いが原因であった:相対リスク0.43(CI,0.25~0.75)対 0.78(CI,0.52~1.17)。メタ回帰分析では造影剤使用後間もなくアウトカムを評価した小規模で良質でない研究が効果を示しやすい傾向にあった(P<0.05)。治療による透析,心不全,そして全死亡率のリスクに対する明らかな効果は示されなかった。
研究の限界: 臨床的なエンドポイントを評価する検出力に限界があった。
結論:ハイリスク患者におけるCIN予防のための炭酸水素ナトリウム療法の効果は不明である.
初期の報告はおそらく効果の大きさを過剰評価したが,より大規模な最近の研究は中立の結果であった。ルーチンの使用が推奨される前に大規模多施設研究で炭酸水素ナトリウムがCINの予防に価値があるか明らかにする必要がある。
主たる試験提供源: なし
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