薬剤疫学を患者さんに

健康・医療の情報を読み解く 健康情報学への招待 [京大人気講義シリーズ]

健康・医療の情報を読み解く 健康情報学への招待 [京大人気講義シリーズ]

 中山先生の著書を、読み直す。

 私たちは気づかないうちに「狭い思いこみの世界」の中で暮らしている。みえない枠に気づいて、より広くものがみられるようになったときの「はっ」とする喜びは、言葉にできないものがある

 「で、先生。その治療の有効性は、プラセボと比較してどのくらいのオッズ比ですか?」と患者さんが診療中に聞いたり、薬剤師に問う場面はくるのだろうか?

 残念ながら、イメージができない。私の薬学部時代には「薬剤疫学」の講座はもちろん、EBMもなかった。15年ほど白衣を着て薬剤師をしながら、学んだことのない「薬剤疫学」は、効果や副作用、コストへ影響する因子を確認する粋な学問だな、と感じていた。思いこみやウソの情報があふれるなか、白黒のうち、どのくらいグレーなのか、グレー度を見せる方法としての役割は大きい。決定や行動を決めるアプローチではないという註釈がつき、即戦力にならず、使い方によって患者を救う点でも、明らかに科学だ。

Storm教授、薬剤疫学の定義:

 「人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する学問」

 2ヶ月前の研修でサリドマイド被害の方と同じグループワークをした。「薬剤疫学を患者さんが理解できていたら、医療も変わるか?」という話題になった。その方は、大学で薬剤疫学の関連教室に所属されておられるそうだが「タミフルを飲みたい、という自分の父親にすら、薬剤疫学を説明できていないんです」とおっしゃる。難しいことなのだ。

 キー・メッセージだけでも拾いたい気持ちで、08月15日[土]午後は東京大学薬学系総合研究棟へ。日本薬剤疫学会タスクフォースの公開フォーラム「医療消費者と薬剤疫学」に参加。

 岩波の表紙を例に、煙が、すっと晴れることができたら?。一部の専門家だけではなく、患者さんも含めいろいろな方々と作り上げたい、という別府先生の姿勢に賛同。中山先生のご講義も聞けた。そして、課題は山積み。

 何が効くのか、何が効かないのか、実際の現場はバイアスだらけの混沌とした世界に、「たぶんこうでしょう」という光を薬剤疫学に照らしてほしい。

 そろそろ読もう、と思っている本。

Textbook of Pharmacoepidemiology

Textbook of Pharmacoepidemiology

公開フォーラム「医療消費者と薬剤疫学」で、紹介されていた本

薬その安全性 (1976年) (岩波新書)

薬その安全性 (1976年) (岩波新書)

患者のための「薬と治験」入門 (岩波ブックレット)

患者のための「薬と治験」入門 (岩波ブックレット)

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