iPhone片手に日本エイズ学会に半日参加してみたら


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 品川で開催されている日本エイズ学会に初めて参加しました。ポスターセッションは、臨床45、基礎69、社会95の演題が掲示され、学び魂に火がつきました。

1.治療選択肢の限られた HIV 感染患者に対してラルテグラビルの有効性

 ラルテグラビル(raltegravir,MK-0518、商品名:アイセントレス)HIV-1 インテグラーゼ阻害薬です。すでに(N Engl J Med 2008; 359 : 339 – 54)で「薬剤耐性 HIV-1 感染に対するラルテグラビルと至適基礎療法の併用」で「追跡調査期間の長さについて補正しなかった場合,ラルテグラビル群の 3.5%,プラセボ群の 1.7%で癌が検出」されつつも、「16 週の時点で HIV-1 RNA 量 400 コピー/mL 未満となったのは,ラルテグラビル群で 458 例中 355 例(77.5%)であったのに対し,プラセボ群では 236 例中 99 例(41.9%)」と報告されている医薬品です。

 研究方法としては、「RALに変更後の脂質改善」を示すのに以下の手法が参考になりました。

調査期間 変更前二~四ヶ月、変更直前、変更後二~四ヶ月
変化率 preRAL=(変更直前-変更前)/変更前、postRAL=(変更後-変更直前)/変更直前
検査項目 (CD4,VL),(TG,TCho,HDL,LDL), (GOT,GPT,Cr)

*変化率は、Wilcoxon signed rank testを用いて、Mean+_SD%

2.サーベイランスで現状を知る

 私の病院もHIV拠点になって間もないので、現状の患者と治療プロトコルの把握でまだ手一杯な状況です。計画を立てる前に、fact controlしておくことが大切ですので、以下の項目が参考になりました。

・処方がどのくらいの割合でガイドライン(治療の手引き)からはずれているか?、Key drug の使用状況、変更理由一覧(salvageと副作用改善で区分け)、他の疾患改善、外来指導件数、在庫金額、院外処方の割合、薬剤師の介入率、他科で併用禁忌のため注意する割合(30%という報告もあり)

3.アドヒアランス向上のための認知変容

 「待つケア」で患者の認知変容がされたケースが紹介されていました。チームで治療の目的、待つケアをすることのリスクを共有して、二ヶ月に一回は電話をするルールなどを設けて、患者が自律的に治療にかかわるようになった事例。患者も変容しましたが、病院チームも認知変容されたようです。

 こういった個別の対応ができるのは、外来指導も含めた「指導の標準化」がされているためで、標準化には以下が参考になりました。

・患者説明の資材「服薬をはじめる前に」(鳥居薬品の提供)

・どの薬剤師が対応してもOKな指導記録

・服薬確認表:飲み忘れ防止に内服確認表を使うか、面談時に必要か検討する

( 初回指導=30分くらい )

項目 チェック 目的
バイタル 身長、体重、血圧 DL、栄養状態、副作用指標
生活リズム 起床、就寝、就労時間、食事、休日 服薬継続可能なリズムか?
嗜好 食事、喫煙、飲酒 併用注意、生活改善
家族 同居者の有無とキーパーソン 病気への理解、冷所保管など
職業 職場の理解、相談相手 緊急対応、内服への支障
既往歴 薬やサプリメント 相互作用、有害事象の回避

( 継続指導=15分くらい )

内服率 内服率からアドヒアランス観察 ちょっとした変化が副作用の可能性
生活環境 治療開始後の生活や体調の変動 ちょっとした変化が副作用の可能性
薬の話 作用、最新の情報 薬の保管、内服方法、保管など再確認

 そのほかcase reportとして、「ニユーモシスチス肺炎(PCP)のST合剤による吐き気に、オランザピンが有効だった一例」、「ニユーモシスチス肺炎(PCP)のペンタミジンによる高血糖に、インスリンが有効だった一例」などが紹介されていました。

 iPhone片手に日本エイズ学会に半日参加で、これだけ学べました。病院にもどったら必ずこのことは実践して、標準的運用できるよう努力しようと思います。国際医療センターで研修をご一緒させていただいた仙台医療センター、三重大の先生方とお会いできなかったのが残念ですが、みなさんに感謝!

これから)今年の学会は都内での開催が多く、たいへん助かります。地方開催の旅情も愉しみなのですが、都内なら「半日参加」も可能です。この場合、会場に入る前に「このテーマについて3つ実践をいだたこう!」とゴールを決めておくことがポイントだと思います。なぜなら、たとえ学会に全日参加して満足感が高まっても、自分の病院で実践したことが1つもなかったら、忘れ去られる自己学習だからです。学会に参加して3つ行動変容ができたら、そのうち1つは病院の成果につながるはずです。学会は、サーチ型の参加で半日でもOK!、実践できることしか学ばないでもOK!(ちなみに、今回のHIV学会メモは、30分ポスター閲覧しながらiPhoneにメモした記録です)

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