感染制御認定薬剤師の試験が終わり一段落。日本病院薬剤師会のライセンスなので「薬剤師のための感染制御マニュアルテキスト」からの出題が多かったようだ(というよりも私はこれしかできなかった)。問題を作成いただいた先生方に感謝。せっかくの勉強を、このブログにメモをしておきたい。
(テキストP.21)エビデンスが明らかでない感染対策
「分割使用するためのバイアル(multidose vials)を感染防止のために一週間で廃棄」
ん?、一週間で廃棄する必要がない、という意味か?
ましてや毎日廃棄する必要もない?
Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections(血管内留置カテーテルに関連する感染予防のCDCガイドライン)より
Multidose Parenteral Medication Vials
Parenteral medications commonly are dispensed in multidose, parenteral medication vials that might be used for prolonged periods for one or more patients. Although the over – all risk for extrinsic contamination of multidose vials is likely minimal (168), the consequences of contamination might result in life-threatening infection (169,170). Single-use vials are frequently preservative-free and might pose a risk for contamination if they are punctured several times.
一般に、経静脈的投与輸液薬剤は、単数もしくは複数の患者に対して、長期間使用される可能性のある多用量バイアルで供給される。この種の多用量バイアルの外因性汚染の全体的なリスクは最小限と考えられるが、汚染が発生した場合は、生命にかかわる感染を引き起こす恐れがある。1回量バイアルには防腐剤が入っていないケースが多く、何度も使用された場合は汚染のリスクが生ずる。
そして勧告は
XI. Preparation and quality control of IV admixtures
A. Admix all routine parenteral fluids in the pharmacy in a laminar-flow hood using aseptic technique. Category IB
B. Do not use any container of parenteral fluid that has visible turbidity, leaks, cracks, or particulate matter or if the manufacturer’s expiration date has passed. Category IB
C. Use single-dose vials for parenteral additives or medications when possible. Category II
D. Do not combine the leftover content of single-use vials for later use. Category IA
E. If multidose vials are used
1.Refrigerate multidose vials after they are opened if recommended by the manufacturer.Category II
2.Cleanse the access diaphragm of multidose vials with 70% alcohol before inserting a device into the vial. Category IA
3.Use a sterile device to access a multidose vial and avoid touch contamination of the device before penetrating the access diaphragm. Category IA
4.Discard multidose vial if sterility is compromised. Category IA
多用量静脈内投与薬剤バイアル
XI.IV 混合剤の調整と品質管理
A.所定の経静脈的投与輸液製剤は全て、薬剤部において、無菌操作を用いて、層流フード内で混合のこと(IB)
B.目視で確認できる濁り、漏出、割れ目、粒子状の物質が認められる経静脈的投与輸液製剤の容器、およびメーカー指定の使用期限が切れたパックは使用しないこと(IB)
C.静脈内投与の添加剤または薬剤には可能な限り1回用量バイアルを使用のこと(II)
D.1 回用量バイアルの内容物の残りを混合して使用しないこと(IA)
E.多用量バイアルを使用する場合
1. メーカーが推奨している場合は、開封後多用量バイアルを冷蔵のこと(II)
2.多用量バイアルに器具を挿入する際は、事前にバイアルのアクセス膜を70%アルコールで消毒のこと(IA)
3.多用量バイアルにアクセスする際は、滅菌済みの器具を使用し、アクセス膜貫通前に器具が接触汚染しないよう配慮のこと(IA)
4.多用量バイアルの無菌性が損なわれたときは同バイアルを廃棄すること(IA)
つまり、「可能な限り1回用量の(使い切り)バイアル」を使用して、やむをえず多用量バイアルを使うなら、「接触汚染しないよう配慮」し、「無菌性が損なわれたときは同バイアルを廃棄する」ことだ。もしも環境や手技に不安があるなら、1回もしくは長くても1日で廃棄することも已むを得ない、と私は再確認した。
(テキストP.15)
米国CDCのガイドラインの推奨項目は、約半数においてRCTが存在しておらず、科学的に感染症発生率への影響を評価する根拠を得ることが困難な項目も少なくない。すなわち質の高いエビデンスがないのである。このように、すべての感染対策にエビデンスを求めることは不可能であり、そのような場合の考え方のよりどころは「理論的な合理性」である。
一歩づつ。
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