一人の科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。ちょっと面白いなという程度でテーマを選んでいたら、本当に大切なことをやるひまがないうちに一生が終わってしまうんですよ。
『精神と物質』利根川進
感染制御の認定審査の書類提出の〆切りが迫っています。1つの作業の目処がつくと、別のことを考えてしまいます。「さて、これから自分は、何のテーマに重点をおくのか?」。
20年くらいの薬剤師経験を俯瞰して、わかったことは、3つの分野をやってきた、ということです。
1.社会的責任 Social Responsibility
薬剤師1年目のころに薬害エイズ原告の川田龍平さんといっしょに食べた刺し身。ここから薬害の裁判支援をがはじまりました。これからも、私が果たす社会的責任は、何なのか?、いちばん大きなテーマなのですが、見定めたい。
2.言語、コミュニケーション
薬剤師5年目くらいでコクランのメタ分析に出会いました。メタ分析の「グラフが読めない」というショックと、科学的でスマートな手法に憧れて、有志の勉強会は100回を超えています。EBMは、患者さんにとっての医療をチームで進める言語だな、と感じています。
3.専門 Expert
薬剤師10年目くらいで、いつのまにか感染制御の委員をずっとつづけていることに気がつきました。専門分野の掘り下げは、本当に面白くて、世界の見方が変わりますね。これからも何か1つ、2つは分野テーマをもっていたいものです。
簡単に書きましたが、薬剤師20年間の経験を俯瞰して、それを価値として表現することは、けっこう大変です。そして、最近は、患者さんやスタッフが、私たちの関わりでかわっていくことは、本当に不思議で、人として人に関わる醍醐味だな、と感じています。
私が社会人1年目に書いた到達に、だいたい今の私は到達しています。次の20年後にどうなっているか?、書いておくことが大切だろうな、と思い巡らしながら、夏をすごしています。
気づき)
・社会人になって10年間は「仕事を断らない」
・この覚悟はよかった。
・たくさんの経験と出会いをいただいたから。
精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)
- 作者: 立花隆,利根川進
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1993/10
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