システマティックレビューが読めなかった私へ

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 薬剤師として働きはじめてすぐに、受けたショックの1つを紹介します。それは、手にした論文の図が、全く読めなかったことです。その治療が有効なのか?、この図に示されているはずなのに、わからない。それは Cochrane の Systematic Review というものでした。無知を自覚した当時の私は、自治医大のEBMコースで、勉強をさせていただくことにしました。

 それから、20年です。もうあんな恥ずかしい思いをすることは、少なくなりました。そして、疫学や生物学統計、ジャーナルを読んで勉強するほどに、そのデザインの奥深さに見入ってしまいます。

 一方で、ジャーナルクラブが定着したり、または発展的に解消されるなか、科学的根拠にもとづく医療は日本で定着したのか?というと、そうでもないだろう、と感じています。科学的根拠はあるけれど、どう使っているのかは、それぞれのようです。

 とはいえ、科学的根拠は存在し、根拠がないことや調査中であることも調べればわかるなか、医療はつづけられているのも事実です。ですから、プロフェッショナルが、今どのように科学のデータを使っているのか、そもそも、どう勉強しているのか、というのは興味深いテーマです。なかなか公開されないことなので、知りたいなぁと願っていたら、目に留まった記事が3つありましたので、ご紹介します。

 薬剤師の皆さんには何より徹底して論文をできるだけ多く読んで勉強していただきたい。
(名郷直樹先生(医療法人社団実幸会武蔵国分寺公園クリニック院長)、TURNUP 第17号 2014年7月1日 )

 EBMを知ったときに、名郷先生のテキストを使いながらSHEP論文を何度も読んだものです。ですから、師匠のような先生なので、名郷先生に「論文読め!」といわれると、はい!、と反射してしまいそうになります。

宮城:復習をきちんとしていますからね。復習を必ずして,次回は間違えないようにする。僕が間違えると,研修医がワーッと喜ぶから,わざと間違えたりすることもあるけどね(笑)。
 医師になるような,勉強のよくできる人は,子どものころから「予習が大事」と言われて育っているでしょう。しかし,臨床というのは次に来る患者を予測できない。予習のできない唯一の学問なんですよ。では,どうすればいいかというと,復習することです。それが次に来る症例の予習になる。その日に診た症例について毎日コツコツ復習する,その積み重ねが大事なんです。
本村:それが,臨床の“勘”を育てるコツだと。
藤田:今でも,回診で知らない症例が出てきたら,帰ってからUpToDate®で勉強されておられるのでしょう。
(宮城 征四郎氏(群星沖縄臨床研修センター長) 週刊医学界新聞 第3087号 2014年08月04日)

 なるほど、UpToDateで必ず、復習です。やっていそうで、やっていない。たいていはやりっ放しで終わり。整理された二次情報としてのテキストにもどって、重ねることが大切。

森:当然,その狙いはあります。さらに私としては,システマティックレビューを作成する手順や過程を共有することを通して,多くの医療者に科学的根拠との「適切な距離感」を知ってほしいとも強く思っているんです。10-20年後の医療をつくることになる若い医療者には,特に体得していただきたい。
―― 距離感,ですか?
森:そうです。知の体系として科学的根拠をインプットしつつ,患者の置かれた環境・状況を正確に評価し,科学的根拠を適用する。こうした軽んじるわけでも,妄信するわけでもない距離感で,科学的根拠と付き合う方法を身につけてほしいと願っています。
(森 臨太郎氏(国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部長/コクラン共同計画日本支部共同代表)週刊医学界新聞 第3088号 2014年8月11日)

 この感覚って正しいと思うなぁ(引用の太字部分)。論文を無視したり手にしないことではなく、知っておきながら、関わるという姿勢。この感覚なんだろうな…

 まだまだやることありますね。
 というか、これからスタートですね。
 システマティックレビューが読めなかった私へ。

もとねすメモ)技術的特異点(Technological Singularity)があるとしたら、次はどうなるの?





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