重度の慢性化された喘息にOmalizumab

 「喘息に、ゾレアを使いたい患者さんがいるんですが・・・」診療部から、そう声をかけられる予感がしたので、新薬評価。抗体医薬品については、薬理でどんなポジションか?忘れてしまったので、先輩に勧められたブルーバックスをなぜか読んでいた。とくに、インフルエンザウイルスが伝播する流れは、生々しいイメージが伝わる。

(評価)

 重症発作1回が0.5回に減少して死亡リスクを下げるなら、必要か? しかし、高価だ。

医薬食品局審査管理課審議結果(2008年12月04日[木])には・・・

・遅発性を含むアナフィラキシーショックのリスクは、患者説明を十分に

・悪性腫瘍については、販売後調査を

海外での評価は、もう少し進んでいて・・・

・現在のもっとも高度な治療においても十分な効果がない喘息死リスクの患者群で再試験(終了したか?)

・「cochrane200704」吸入ステロイドの投与量を減少できる(その割には、コストが高い)

・「UPTODATE」治療反応性の予測は30-50%で困難である。コスト分析は、conflict。

そして、コクランのレビュー詳細で、もう少しピントがあう。

Anti-IgE for chronic asthma in adults and children. The Cochrane Database of Systematic Reviews 2006, Issue 2.

レビューアの結論:オマリズマブは、吸入ステロイド薬の減少または中止が可能となる患者数を増加させる点においてプラセボよりも有意に有効であったが、ステロイド使用量減少効果における臨床的価値は、オマリズマブの高いコストの点を考慮する必要がある。対照群でみられた顕著なプラセボ効果により、オマリズマブの真の効果に疑問が生じている。オマリズマブの臨床試験では、吸入ステロイドに対する補助療法として、またステロイド漸減期間中における喘息増悪の軽減に有効であった。オマリズマブは一般に忍容性が良好であったが、オマリズマブによる注射部位反応はプラセボよりも多かった。患者と医師の本剤に対する評価は肯定的であった。オマリズマブは、小児集団における直接ダブルダミー法を用いたICSとの比較により、さらに評価を行う必要がある。(MindsPLUSより)

ゾレア皮下注用(添付文書抜粋)

商品名 ゾレア皮下注用150mg

一般名 オマリズマブ(Omalizumab)

薬効 気管支喘息治療剤(ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤)

収載 2009年3月、生物由来製品、劇薬

適応症 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)

用法 オマリズマブ(遺伝子組換え)として1回75~375mgを2又は4週間毎に皮下注射(×静注、筋注)

以下のいずれか(別表あり)

・0.008mg/kg/[IU/mL]以上(2週間間隔皮下投与時)

・0.016mg/kg/[IU/mL]以上(4週間間隔皮下投与時)

*投与量換算表に該当しない患者への投与は行わないこと。

*体重変化は投与量を再設定するが、血清中総IgE濃度による用法・用量の再設定は行わない

(IgEの消失半減期が延長し、血清中総IgE濃度が上昇するため)

注意 *通年性吸入抗原に対して陽性を示すこと

*体重及び初回投与前血清中総IgE濃度が投与量換算表で定義される基準を満たす場合→追加

症状が安定しない定義

・喘息に起因する明らかな呼吸機能の低下(FEV1.0が予測正常値に対し80%未満)

・毎日喘息症状が観察される

・週1回以上夜間症状が観察される

*1バイアルあたり1.4mLの日局注射用水で溶解する。溶液1.2mLがオマリズマブ150mgに相当

*投与量が150mgを超える場合は複数のバイアルを使用する

*16週間使用しても効果が認められない場合には、漫然と投与を続けない

*アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)のリスク

*ショック、アナフィラキシー様症状は本剤投与後2時間以内が多い

*長期投与は、国内で48週間まで、海外では4年間まで。以降の安全性は未確立。

患者別 患者説明 ・伝達性海綿状脳症(TSE)リスク(米国、カナダのウシ骨由来ペプトン培地)

・すでに起こっている発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではない

・めまい、疲労、失神、傾眠、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意

*高齢者 △ 慎重投与

*妊婦  △ 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ

*授乳婦 × サルで乳汁中への移行

*小児  不明 投与経験なし

機序 IgEと複合体を形成し、遊離IgEを減少させる(防御能低下のため寄生虫感染地域に旅行は注意)

→ 血中IgEと複合体を形成するため、IgEの消失半減期が延長し、血清中総IgE濃度が上昇

*従って、本剤投与中のIgE測定値を、用法・用量の再設定には用いないこと。

*高IgE血症を示す疾患(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症等)の診断や

 アレルギー性の喘息の治療効果の診断の根拠として用いないこと。

→ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であり、IgEと高親和性受容体(FcεRI)の結合を阻害

→好塩基球、肥満細胞等の炎症細胞の活性化を抑制

動態 Tmax 7(日)、Cmax 16.7±2.7(μg/mL)、t1/2 21.0±3.5(日)

効果 朝のピークフロー(L/min)  本剤群 プラセボ群

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★中等症~重症 (151例) (164例) *高用量吸入steroid+喘息治療薬1剤以上

 baseline+平均改善 323+15.45 328+13.19 [5.93~20.46](p<0.001)

★重症 (70例) (91例) *高用量吸入steroid

  +(治療薬2剤以上or経口steroid)

 baseline+平均改善  308+13.92 301+10.77 [1.49~20.04](p=0.023)

★重症持続型 (209例) (210例)*高用量吸入steroid+長時間作用型β2

 →投与期間(28週間)あたりの喘息増悪(全身性steroid治療を必要とする喘息症状悪化)頻度

0.68回 0.91回 0.738[0.552、0.998] (p=0.042)

副作用 ・国内284例中134例(47.2%)

 →注射部位紅斑53例(18.7%)、注射部位そう痒感26例(9.2%)、注射部位腫脹24例(8.5%)、

  注射部位疼痛20例(7.0%)、注射部位熱感14例(4.9%)、注射部位硬結13例(4.6%)等

・海外 アナフィラキシー0.1%(7例/5,367例)→市販後推定0.2%、約30%は投与2時間以降に発現

悪性腫瘍発現率 本剤投与群 対照群

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国内 0.2%(1例/589例) 対照群0.3%(1例/393例)

海外 0.5%(25例/4,645例) 対照群0.2%(6例/2,694例)

★合計 0.5%(26例/5,234例) 対照群0.2%(7例/3,087例) *有意差なし

薬価 ゾレア皮下注用 1バイアル 70,503円

包装 ゾレア皮下注用 1バイアル

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